地域団体商標登録 第5022470号認定
阿蘇たかな漬とは、その名の通り阿蘇高菜を主原料にした漬物です。「阿蘇たかな漬」は平成19年に地域団体商標登録(地域ブランドとして登録)されています。その定義は熊本県阿蘇市および阿蘇郡内で収穫されて阿蘇高菜を使用した物。となっています。つまり、阿蘇市内および阿蘇郡以外の高菜は阿蘇たかな漬として認めないという事です。
近年は農家の高齢化に伴い、収穫量が激減しており、手に入らなくなりつつあります。
九州の高菜といえば阿蘇高菜の他に三池高菜が知られていますが、名前は同じ高菜でも全く別の品種です。また、三池高菜の様に一般的な高菜が葉の部分を中心に使うのに対し、阿蘇たかなは茎の部分を中心に使います。
阿蘇たかな漬には浅漬と本漬の2通りに大別されます。浅漬はさっぱりとしたフレッシュ感が特徴。本漬は独特の熟成された風味が特徴です。
左:阿蘇高菜 右:一般的な高菜(三池高菜)
阿蘇たかな漬の主原料である阿蘇高菜は古くは928年の『延喜式』に菘(たかな)と記述されており大変古い歴史があります。室町時代頃から熊本県阿蘇地方でのみ僅かな量だけが栽培されてきたと考えられています。元々は農家の人たちが自家菜園で自分たちが食する分だけ栽培していた野菜でした。
阿蘇たかなは世界一のカルデラと称される標高500~1000mの阿蘇地方でのみ栽培される阿蘇を代表する農産物で寒暖の差が大きい高冷地ならではの気候や火山灰土壌など阿蘇特有の風土に恵まれた環境の下でのみ栽培されます。
阿蘇地方は世界ジオパーク、世界農業遺産にも登録された自然豊かな大地です。その特異な環境で作られ続けた為か、阿蘇地方以外では栽培する事が不可能とされており、幻の高菜とも呼ばれています。阿蘇たかなは茎が細くて歯ごたえがあり、独特の辛み成分を持っているのが特徴で、アブラナ科の植物カラシナの一種で、広島菜、野沢菜と共に日本三大菜に数えられています。
阿蘇高菜の収穫時期は春です。阿蘇たかなは厳しい冬を越して育つ為、害虫が付着せず農薬を一切使用する必要がありません。基本的に農薬は使用しない農薬無散布栽培を行っています。
収穫は昔から『高菜折り』という伝統手法で行われ、手作業で機械を使わず茎の柔らかい部分を1本ずつ手で折りながら収穫されます。これは、選別作業を兼ねている為で非常に手間暇がかかる作業です。
人間の感覚でしか判らない一番良いところを直接確かめて収穫します。この収穫風景は主に春先によく見られ、阿蘇では『高菜折り』と呼び、阿蘇の風物詩となっています。また、厳しい冬を越し春を迎えた阿蘇高菜は「新漬」と呼ばれ春の味覚として親しまれています。
一般的な高菜(三池高菜)の場合、収穫後は、葉の部分が大きい為、そのままだと漬け込みの際に苦労します。そこで、三池高菜の場合は、収穫後は、丸1日、天日干しして水分を抜き、全体を柔らかくする必要があるので、実質、収穫から漬け込みまで2日要します。
一方、阿蘇高菜の場合は、三池高菜と違い、茎が細い為、漬け込みの前に天日干しする必要がありません。畑から収穫したその日の内にタンクへ漬け込みます。
この様に収穫~漬け込みまで、阿蘇高菜はスピーディーに作業が行われますので、畑から収穫したままの鮮度を保ち加工されます。その結果、三池高菜にはない鮮度と味、食感が生まれるのです。